
「産学連携による新たな企業価値の醸成」
産学連携による新たな企業価値の醸成 ―企業と大学、双方の視点から―
金沢工業大学 教授 山部 昌
私は民間企業に17年間在籍した後、金沢工業大学に30年間勤務してまいりました。今回は、企業人としての経験と大学での経験の両方を踏まえ、「産学連携による新たな企業価値の醸成」について、私見を述べさせていただきます。
企業側から見えた課題――「原理・原則」の解明不足
企業に在籍していた頃、研究開発のプロセスにおいて、ある程度結果の方向性は見えてきたものの、その根幹にある原理・原則の解明が十分でないまま次の段階へ進んでしまう場面を数多く経験しました。
たとえば、 設計→試作→製造準備→製造 という一連の部品開発の流れの中では、様々な課題が浮かび上がります。しかし納期に追われるあまり、十分な考察や対策を行わないまま次工程へ進んでしまうことが少なくありませんでした。
その後、問題なく立ち上がればよいのですが、先送りにした懸案事項が次工程で顕在化し、結果として大きな出戻りが発生することがあります。
そうなると、その対策にかえって多くの時間を費やすことになり、コストや納期を守れなくなってしまう。こうした経験から、問題が顕在化する前に、様々な事象を原理・原則にさかのぼって捉え、次工程で生じ得るリスクをあらかじめ考えておく必要性を強く感じるようになりました。
大学の知見・設備を活用した産学連携
そうした課題意識のもと、大学が持つ知見や実験設備を活用できないかと考え、多くの大学と連携を図りました。その結果、いくつもの具体的な成果につなげることができました。
大学へ移ってから
――企業経験を活かした産学連携の推進
大学へ移ってからは、企業での経験を活かし、大学の知的財産や研究設備を積極的に活用してもらえるよう企業へ提案し、多くの共同研究を推進してまいりました。
私は主にものづくりのプロセスに関する研究をしており、実際の生産現場で起こりうる不良現象を事前に予測する「パイロットプラント」の手法を提案し、それを実際の生産現場における不良率低減へとつなげてきました。
産学連携を継続的に進展させる鍵
――双方のWin-Win
これまでの経験を振り返ると、産学連携は双方がWin-Winの関係でなければ、円滑かつ継続的に進展しません。
• 企業にとっては、普遍的な原理・原則の確立につながること
• 大学にとっては、基礎研究を実学へと発展させ、新たな価値創造につなげること
この両者のニーズがうまく一致したとき、産学連携は大きな成果を生み出すものと考えています。
プラリンクが果たす役割
プラリンクには、企業経験者や大学・公的機関に所属するメンバーが多く在籍しております。その強みを活かし、企業と大学・研究機関との「結びつけ」を円滑に推進することも、私たちの大きな使命の一つと考えております。
ものづくりという観点で考えると、まず私たちがお伺いするのは、「材料」「プロセス(作り方)」「品質評価」のどこがボトルネックになっているか、という点です。
これら三者は複雑に絡み合っていますが、まずはそれぞれを分解し、個別の課題として落とし込むことが大切だと考えています。
おわりに
「どこに、何を、どのように相談すればよいかわからない」
分野が異なっていても、お互いの成功事例を共有することが、まずは第一歩になると考えています。
